腹腔鏡下調節性胃バンディング術 ラップバンド LAGB

短期の安全性に最も優れもとに戻すことが可能

腹腔鏡下調節性胃バンディング術(Laparoscopic Adjustable Gastric Banding)はその商品名
のひとつから『ラップバンド』と呼ばれることもしばしばあります。
 
胃の上部にバンドを巻いて食べる量を調整する手技で胃を切ったり縫ったりすることはないため手術そのの安全性は高いといえます。
 
もともとはアメリカで開発された手術ですが、オーストラリア、ヨーロッパ、そして南北アメリカ大陸で比較的多く行われるようになった手術です。日本においても2005年に大分大学の北野正剛教授によって日本に導入されました。この術式を安全に我が国に普及させるために定期的に腹腔鏡下胃バンディング術のトレーニングコースが大分大学医学部で行われています。この手術は胃や腸を切断したり吻合したりすることなく特殊なバンドを胃の最上部(食道とのつなぎ目の近く)に巻き付けるだけの手術です。そのため、手術そのものの技術的な難易度は他の減量手術と比べると低いと言えるかもしれません。手術時間や入院期間が比較的短い(1~3日)のが特徴です。胃に巻き付けたバンドはとても軟らかく、生体に優しい素材で出来ていてバンドの中には水が出し入れ出来るような構造でいわば風船のようになっています。バンドは腹部の皮下においた『アクセスポート』とチューブで連結され
ておりそのアクセスポートから生理食塩水を注射器で出し入れすることによりバンドの締め具合を調節します。術後は減量の進み具合を見ながらずっとこのバンドの調節を定期的(1ヶ月ごと)にすることによって適切な体重減少が得られるようにしますのでメンテナンスのため定期的な外来通院が必要となります。ラップバンドは手術のみでは適切な減量効
果は得られません。目的達成のためには手術そのものよりもむしろ術後のバンド調節に大きく依存します。現在使用できるバンドはLAP-BANDやBIDBANDなど外国製であり米国などではFDA等の承認が得られて公式にも医療器具として認められておりますが、日本においては厚生労働省の認可がおりていません(薬事未承認)。ですから、現在のところはあくまでも自己責任において個人輸入という手続きをとって使用することになります。
 
【バンディングの利点】
 
他の減量手術と比較すると胃や腸を切除、縫合、吻合等をすることがないことにより.術後早期の合併症は他の減量手術に比較して低くなります。文献での報告では手術に関連した死亡率は0.1%程度で胃バイパス術よりも低くなっています。小腸をバイパスすることがないため栄養吸収障害のリスクが低くなっています。また、消化管には外科的処置を加えていないため、必要であればバンドを除去することによりほぼ術前に近い状態に戻すことも可能です。また、バンドの締め具合を調整できますので、胃カメラも可能ですし、妊娠時には一時的に食物の摂取量を増やすこともできます。
 
【胃バンディングの欠点】
 
バンドシステムという”人工物(異物)”を体内に埋め込む必要があり、他の手術に比較して頻繁に通院する必要があります。また、Sweet eater( 甘いものをよく食べる人)には効果が低いと言われています。
 
【バンディングに特有なリスク】
 
合併症のリスクのない手術はありません。報告されている多くの合併症は重篤なものではありませんがときに入院や手術を要することもあります。米国では研究報告によると 嘔気・嘔吐(51%) 逆流性食道炎(34%)、バンドのスリップ・胃嚢の拡張(24%)、バンド部の閉塞(へいそく)(14%) 等が主な合併症です。報告によると胃バンディング術を受けた患者さんの 25%が何らかの理由でバンドを除去 することになったとのことです。除去の理由の2/3は以下の理由です。「食道拡張」が11%、「嚥下障害・便秘・下痢」が9%、9%の患者さんはバンドの問題を解決するために再手術が必要でした。アクセスポートの不具合でも9%の患者さんにおてい再手術が必要でした。胃バンディング手術を受けた1.3%の患者においてバンドが胃の内側に入り込んでいく 「erosion(侵蝕)」 が起こりました。そのようなことが起こった場合は再手術によりバンドを除去しなければなりません。
 
【胃バンディングの効果】
 
バンディングは手術そのものも重要ですが、さらに重要なステージは術後のバンドの調節といわれています。ですから、術後決められたプログラム通りにきちんと外来通院をしなければ減量効果は現れません。そればかりか合併症が起こっても病院に来なければ診断することも治療することもできませんので通院は必須です。 決められた食事を守り、プログラム通りに通院してバンドの調整をした場合の減量効果は一般に良好 であり3年かけてゆっくりと体重は減量しその後はその体重が維持されます。平均的には 術後1年で超過体重の40%が減り、術後3年で超過体重の43%程度が減少する といわれています。つまり、患者さんの理想体重が60Kg であった場合、手術時の体重が130Kg としますと、「超過体重」は130-60=70となり超過体重は70Kgとなります。70kgの43%ですから70x0.43=30.1Kgの減量効果が期待できるということになります。あくまでも効果には個人差がありますのでこれより多く減量できる人もいれば逆の場合もあります。他の治療法と同様に食事療法を守らない場合は体重の再増加(リバウンド)の可能性はあります。また、術後、減量に伴う糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎の改善率はそれぞれ48%,38%,78%,94%,32%と報告されています。
 

胃バンディング術の日本での状況

現在ではスリーブ状胃切除術が主流になってきましたのでごく一部の患者さんにしか行われておりません。
ラップバンドの解説のアニメーションがYoutubeで公開されていますので紹介します。


 


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