腹腔鏡下スリーブバイパス LSG with DJB

日本で生まれた究極の糖尿病手術

 欧米では1990年代後半に腹腔鏡下肥満外科手術が急激に増加しましたが、当時日本では開腹手術を一部の施設で僅かに行っている状況でした。 そのような状況の中、日本では2002年に笠間和典先生(四谷メディカルキューブ)により初めて腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術が行われました。極めて良好
な成績でしたがルーワイ胃バイパス術はバイパスされた胃が容易に胃カメラなどで観察できないという欠点(?)を有していました。胃がんが多いとされている日本においては胃バイパス術は積極的に行うべきではないとの意見が胃がん治療を専門としている一部の人たちから上がりました。2005年には腹腔鏡下スリーブ状胃切除術という新しい手術が日本でも取り入れられました。胃の大部分を切除してしまうこの手術は術後も胃カメラができるというメリットが注目されたこと、消化管吻合が無いので技術的にも容易で縫合不全が少ないのではないか?、小腸は完全に温存されるので長期の栄養吸収障害が少ないのではないか?などのメリットが論じられました。しかも、体重を落とす力はルーワイ胃バイパス術に匹敵する強力なものでした。そのため、日本ではバイパス不要論が出てきたのです。確かに体重減少効果は十分あるのですが、術後合併症に関しては決してルーワイ胃バイパス術より少ないことはありませんでした。また、近年、体重を落とす効果よりも、肥満に伴う『2型糖尿病』などどの治療を主な目的とした『 Metabolic  surgery=代謝手術』『 Diabetes surgery=糖尿病手術』としての効果はルーワイ胃バイパス術よりも劣っていました。

 そこで、東京の四谷メディカルキューブ・減量外科センター・笠間和典先生はスリーブ状胃切除術とルーワイ胃バイパス術のいいところを組み合わせた手術を行ってはどうか・・といいうことでスリーブ状胃切除術と十二指腸空腸バイパスを一期的に行う『スリーブバイパス=Laparoscopic sleeve gastrectomy with duodenojejunal bypass: LSG-DJB』を開発し、その良好な結果を肥満減量手術で世界的に最もメジャーなジャーナルであるObesity Sugeryに2007年に発表しました。その手術は、減量手術の世界において初めてのMade in Japanでした。たしかに、その手術はハード的には十二指腸変更術(Duodenal switch)と類似していますが栄養吸収障害を効果のメインにするのではないというコンセプトは全く新しいものでした。実際、この手術での抗糖尿病効果は高く、欧米に比較して低体重の割に糖尿病になりやすいと言われているアジアでは絶大な支持を得ました。今後、糖尿病の治療を目的としたmetabolic surgery/Diabetes surgeryという分野では間違いなく中心的な役割を果たす手術になるでしょう。
現在、先進医療、そして保険収載をめざしてこの手術のメカニズムの解析に平行してその臨床成績が集積されています。
 


 


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