腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 スリーブ LSG
比較的新しい手術だが治療効果が高く最も多く施行されている
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(Laparoscopic Sleeve Gastrectomy 以下LSG)は胃を手術(腸に手術
操作を加えることはありません)して食べる量を制限します。LSGはまた胃部分切除術、垂直袖状胃切除術などとも呼ばれます。この手術は胃を細長いチューブのようなものに形成するため”スリーブ(
袖;そで)”とよばれます。LSGでは胃の2/3を切除し残りの胃の容量は60~100ml程度になるといわれています。胃の容量が少なくなるため早期の満腹感と過剰な食欲の減少をもたらします。その小さな胃袋は一度に食べられる食物の量を制限します。小さな胃のチューブを切り離した後、残りの2/3の胃袋は
体外へ摘出します。胃の出口のバルブである”幽門”は残るため胃からの食物排出機能は正常に保たれますので満腹感は維持されます。LSGは手術のリスクが高い超肥満の患者さんに対してBPDや胃バイパス術の前段階の手術として行われることが多かったのですが、LSGのみでも結構減量効果が良好なことが徐々に分かってきて、最近では2期的手術の1期目という位置づけだけでなくそれ自体が独立したひとつの手術として行われるようになってきました。。LSGでは胃と小腸のつなぎ合わせること(吻合)や腸の内容物が通るルートを変更すること(バイパス)はありません。また栄養吸収障害もほとんどありません。食べたものが急速に小腸に流入することによるダンピング症候群もありません。LSGは食欲を刺激するGhrelin(グレリン)という消化管ホルモンをつくる胃の一部(胃底
部)を切除するため胃バンディング術より減量に関して有利であると考えられています。この手術の合併症の頻度は0.5%程度と報告されておりでBPDや胃バイパス術に比較して若干低いと報告されています。(写真①:腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を提唱したM.Gagnerと. 写真②:腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後1年の男性の腹部のきず)
【スリーブ胃切除(LSG)の利点】
LSGでは胃バンディング術のように体内に人工物を埋め込む必要性はありません。また胃バイパス術やDSのように消化管の切離や吻合という比較的複雑で難易度の高い操作がないので手術はそれらに比較して簡便でリスクは低いとはいえます。ですから、手術のリスクの非常に高い患者さん、たとえばBMIが50を超えるような「超肥満 Super obese」の患者さんや心臓病など重要臓器の機能が低下している患者さんの場合は複雑な手術に比較して手術に伴うリスクを軽減させることができます。また腹腔鏡下胃バンディング術は術後にバンドの締め付け具合を頻繁に調整する必要性がありましたがこの手術ではその処置は不要です。いわば、「メンテナンスフリー」ということがいえます(定期通院と食事療法の継続は必須です)。先程述べたようにGhrelin(グレリン)という食欲を惹起するホルモンを多く作っている胃底部を切除するため過剰な食欲を抑え、飢餓感を無くする働きがあると考えられていますので術後は無性に食べたいという欲求が起こりにくくなります。また、日本人は胃がんの発生率が高く胃バイパス術において通常の胃カメラでは胃の観察が不可能であるということが懸念されていました。しかし、LSGにおいては通常の胃カメラでの観察が特別な装置を必要とすることなく可能ですから胃がんの発見が遅れてしまうという懸念は少なくなります。
【LSGに特有のリスク・合併症】
LSGでは胃や腸をつなぎ合わせる”吻合(ふんごう)”という操作はありませんが胃の一部を切除する必要があります。胃の切除には通常”エンドリニアーステイプラー”という器械を使います。胃の切離と縫合を自動的に行ってくれる非常に信頼性の高い器械ですが、まれに上手くいかない場合もあります。まず、胃の切離部位からの 「出血」 が起こりえます。手術中に起こることもあれば手術後数時間経って出血する場合もあります。手術中でしたらすぐに止血を行いますが、術後の出血(後出血)で、保存的に止血することができなければ再手術にて止血を要する場合があります。また、胃を切離・縫合した部位の胃壁の癒合が悪く、術後に胃の内容物が腹腔内(おなかの中の空間)に漏れる場合があります。これは「 リーク」 または「 縫合不全(ほうごうふぜん)」 と呼ばれ、もっとも起こってほしくない合併症のひとつです。いったん起これば長期入院、長期の絶食、胃の周りに多くの膿が貯まれば( 腹腔内膿瘍 )それを体外に誘導するための「ドレナージ」そして再手術を要する場合もあります。通常縫合不全が起こった場合は入院期間が2ヶ月以上に及びます。治療効果に乏しい場合は 生命の危機 につながる場合もありますがその頻度はまれです。出血やリーク(縫合不全)のリスクを軽減するために胃の切離部位はステイプラー(ホッチキス)に加え、腹腔鏡下にその部分を糸で縫って補強します。また、LSGでは減量効果を出すために胃をチューブのように形成しますが、術後に徐々に細くなり食事が通らなくなる場合があります。「狭窄(きょうさく)」。その場合は胃カメラで観察しながらバルーンで拡張したりすることもありますが効果は一定していません。食事がほとんど通らない場合は再手術を要する場合があります。その時は2回目の手術で腹腔鏡下ルーワイ胃パイパス術にするか「十二指腸変更術DS」にする必要があります。
【LSGの効果】
胃の一部を切除してしまうだけですが予想以上にこのシンプルな手術の成績は良好で体重減少率は胃バイパス術にせまるものがあります。短期的な成績は 術後1年での体重減少は平均59kg で 超過体重減少率は59% と報告されています。これはバンドよりは良好で胃バイパスやDS に比較するとわずかに劣ります。しかし比較的新しい手術であるのでその長期的な成績はまだ出ていません。長期的に減少した体重が維持されるのか、栄養状態は良好に保つことができるのかは今後の研究が待たれています。糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群等の肥満に関連する合併症の治癒・改善率も良好ですが胃バイパス術やスリーブバイパス術よりは糖尿病をコントロールする力は低いとされる報告が多いです。



【スリーブ胃切除(LSG)の利点】
LSGでは胃バンディング術のように体内に人工物を埋め込む必要性はありません。また胃バイパス術やDSのように消化管の切離や吻合という比較的複雑で難易度の高い操作がないので手術はそれらに比較して簡便でリスクは低いとはいえます。ですから、手術のリスクの非常に高い患者さん、たとえばBMIが50を超えるような「超肥満 Super obese」の患者さんや心臓病など重要臓器の機能が低下している患者さんの場合は複雑な手術に比較して手術に伴うリスクを軽減させることができます。また腹腔鏡下胃バンディング術は術後にバンドの締め付け具合を頻繁に調整する必要性がありましたがこの手術ではその処置は不要です。いわば、「メンテナンスフリー」ということがいえます(定期通院と食事療法の継続は必須です)。先程述べたようにGhrelin(グレリン)という食欲を惹起するホルモンを多く作っている胃底部を切除するため過剰な食欲を抑え、飢餓感を無くする働きがあると考えられていますので術後は無性に食べたいという欲求が起こりにくくなります。また、日本人は胃がんの発生率が高く胃バイパス術において通常の胃カメラでは胃の観察が不可能であるということが懸念されていました。しかし、LSGにおいては通常の胃カメラでの観察が特別な装置を必要とすることなく可能ですから胃がんの発見が遅れてしまうという懸念は少なくなります。
【LSGに特有のリスク・合併症】
LSGでは胃や腸をつなぎ合わせる”吻合(ふんごう)”という操作はありませんが胃の一部を切除する必要があります。胃の切除には通常”エンドリニアーステイプラー”という器械を使います。胃の切離と縫合を自動的に行ってくれる非常に信頼性の高い器械ですが、まれに上手くいかない場合もあります。まず、胃の切離部位からの 「出血」 が起こりえます。手術中に起こることもあれば手術後数時間経って出血する場合もあります。手術中でしたらすぐに止血を行いますが、術後の出血(後出血)で、保存的に止血することができなければ再手術にて止血を要する場合があります。また、胃を切離・縫合した部位の胃壁の癒合が悪く、術後に胃の内容物が腹腔内(おなかの中の空間)に漏れる場合があります。これは「 リーク」 または「 縫合不全(ほうごうふぜん)」 と呼ばれ、もっとも起こってほしくない合併症のひとつです。いったん起これば長期入院、長期の絶食、胃の周りに多くの膿が貯まれば( 腹腔内膿瘍 )それを体外に誘導するための「ドレナージ」そして再手術を要する場合もあります。通常縫合不全が起こった場合は入院期間が2ヶ月以上に及びます。治療効果に乏しい場合は 生命の危機 につながる場合もありますがその頻度はまれです。出血やリーク(縫合不全)のリスクを軽減するために胃の切離部位はステイプラー(ホッチキス)に加え、腹腔鏡下にその部分を糸で縫って補強します。また、LSGでは減量効果を出すために胃をチューブのように形成しますが、術後に徐々に細くなり食事が通らなくなる場合があります。「狭窄(きょうさく)」。その場合は胃カメラで観察しながらバルーンで拡張したりすることもありますが効果は一定していません。食事がほとんど通らない場合は再手術を要する場合があります。その時は2回目の手術で腹腔鏡下ルーワイ胃パイパス術にするか「十二指腸変更術DS」にする必要があります。
【LSGの効果】
胃の一部を切除してしまうだけですが予想以上にこのシンプルな手術の成績は良好で体重減少率は胃バイパス術にせまるものがあります。短期的な成績は 術後1年での体重減少は平均59kg で 超過体重減少率は59% と報告されています。これはバンドよりは良好で胃バイパスやDS に比較するとわずかに劣ります。しかし比較的新しい手術であるのでその長期的な成績はまだ出ていません。長期的に減少した体重が維持されるのか、栄養状態は良好に保つことができるのかは今後の研究が待たれています。糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群等の肥満に関連する合併症の治癒・改善率も良好ですが胃バイパス術やスリーブバイパス術よりは糖尿病をコントロールする力は低いとされる報告が多いです。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の日本での状況
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は日本において唯一保険診療が認められている腹腔鏡下肥満手術です。そのこともあり、国内では70%と最も多く施行されています。
我々の施設で行っている腹腔鏡下スリーブ状胃切除術のビデオをYoutubeにアップしていますのでリンク先を示します。手術映像ですので苦手な方は注意されてください。またスリーブ状胃切除術の解説のアニメーションがYoutubeで公開されていますのでこれもリンク先を紹介します。