腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険点数の実際

実際いくらの医療費がかかるのか?

 
大浜第一病院では平成28年度・腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を保険で施行するための施設基準を沖縄で唯一クリアし,様々な角度から条件に合致する患者さんには腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(K656-2)で外科治療を行っています。他の病気に対する外科治療ではあまり医療費の質問を頂くことはないのですが、この治療に関しては頻繁にそのことを聞かれます。不思議なことは、無症状の胆石やヘルニアなどに関しては『普通に』保険適応で外科治療が多くなされているにもかかわらず、病的肥満症だけが『特別扱い』されるのは問題だと考えています。おそらく、病的肥満症は病気ではないと理解されてる人が多いことに起因するのではないでしょうか。この疾患こそ、患者さん個人の命に関わることであるばかりか、高度肥満に関連する多くの合
併症(糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、膝関節症、不妊、悪性腫瘍、他多くの疾患)に関連する莫大な医療費を発生させますので社会的な負担は膨大な数字になります。これはもはや個人の責任の問題として扱うことはできません。当然、他の多くの疾患と同じように、病的肥満症にも予防が最も重要ですが、現実問題として急速にその疾患は国内外で著明に増加し生産性の低下と莫大な医療費を発生させる原因となっています。
 さて、実際今回の保険改定の後、手術前後に合計10日間入院しスリーブ状胃切除術を行った結果の総医療費はいくらと計算されたのでしょうか。結果は 114,504点でした。1点が10円
ですから 手術(診療材料費込み)と麻酔、入院費、その他を含めた総医療費は114万5千40円かかったことになります。普通、その3割が自己負担ですが、制度上高額医療費制度が適応されるので実際の個人の負担額は基本的にはその1/10以下となることが多いと思われます。また民間の生命保険に加入されている方は契約内容によっては費用の一部が負担されます。後は、社会的経済負担がどうなるのかということですね。病的肥満症の患者さんの合併疾患にかかる医療費(糖尿病、高脂血症、抗肥満薬、婦人科疾患、高血圧症など)が薬剤も含めかなり大きいので3年でもとは取れるという試算があります。つまり、40歳で治療した場合、43歳以降に発生することになっていた莫大な医療費負担が要らなくなるということですね。もし、肥満症がもとになり、慢性腎不全になった場合は血液透析が行われ、一人の患者さんに少なくとも年500万円(20年で1人の患者さんに1億円)の公費が発生します。そのため、肥満減量手術は、他のどの疾患の治療をするよりも社会経済的なメリットは大きいという試算があります。
 繰り返しますが、最も大切なのは病的肥満患者を作り出さない社会環境を構築することです。身の回りに高カロリー・低栄養の食物や嗜好品があふれ、コンビニや居酒屋の充実でライフスタイルが大きく変化し夜
型社会となり、コンピュータやスマホの画面の前で座って(寝て)過ごす時間が増え、車社会でほとんど歩かなくなってしまった人が増えたことなどが複合的に影響して高度肥満が増加したと思われますが、この問題は一朝一夕で改善できるものではありません。将来的には多くの人の英知を集結し克服される日が来ると信じていますが、今、ただひとつ私たちができることは、不幸にもその疾患にかかってしまって健康上、重大な問題が発生している患者さんに対し、効果が高く安全性に優れた外科治療プログラムを提供することだけだと考えています。
 
 注:添付した写真は①スリーブ状胃切除術のシェーマ、胃の切り取る範囲を示しています②スリーブ状胃切除術の手術の様子(4Kの最新腹腔鏡で手術しています)、③ 手術を受けた患者さんが術前に飲んでいた薬(その薬の多くが不要になります)

 
詳しくはメールや電話でのお問い合わせも大丈夫です。islandclinic@icloud.com



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