腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険施設基準クリア

条件付きで健康保険が適応

 
大浜第一病院では平成28年度・腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を保険で施行するための施設基準をクリアしました。ですからガイドラインで定められたた条件に合致する症例であれば他の手術と同様に保険診療で行えます。沖縄ではもちろん当院でだけですが、全国的にも施設基準をクリアできる施設は多くないと思います。
 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、比較的新しい手術で、シンプルな手術方法であるにもかかわらず体重を落とすパワーがこれまで事実上の標準手術であった『ルーワイ胃バイパス術』と遜色がないということが明らかになり、世界中で急激に増えてきました。アメリカにおいても2015年には、Gold standardといわれている胃バイパスをスリーブ状胃切除が件数で上回ったとい
う情報があります。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が日本で最初に行われたのは2005年ですが、自費(または大学での校費)、先進医療を経て保険適応となったのが2014年でした。しかし、2014年の保険点数は手術に使用する使い捨ての器材のコストが国が設定する手術コストよりも高く事実上、施行困難でした。また、コストだけでなく、『施設基準』なるハードルが立ちはだかりました。文末に役所の文書を添付しますが、比較的ハードルが高く設定されています。ポイントは 年間20例以上の腹腔鏡下胃手術を施行していなければならない』、『 これまで10例以上の腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の経験を有する』というところですね。前者は普通に胃がん手術を行っている施設であれば問題ないでしょう。後者に関しては、 術者として10例以上を上級医の指導の下に行える施設は日本では数カ所しかありません。ですから、現実的にはかなりのハードルの高さと言えます。日本ではかなり多くの腹腔鏡下胃がん手術が行われています。胃がん手術に比べるとスリーブ状胃切除術は簡単と思っている人がいるかもしれませんが決してそんなことはありません。有効な結果を出しつつ、合併症を最小限に抑えるには多くの技術的ポイント・困難性があります。ですから、経験豊富で優秀な腹腔鏡下胃外科医であったとしても、『片手間』には絶対に行っていけない手術だと思います。手術もピットフォールがありますが、手術だけでは治らない病気であるということも大きなポイントですね。
ですから、ハードルが高いことは決して悪いことではなくその外科治療が安全にこの国で発展・普及していくための調節弁と考えることもできます。
 


[通知]第72の8 腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)

第72の8 腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)

1 腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)に関する施設基準

(1) 外科又は消化器外科及び内科、循環器科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保険医療機関であること。

(2) 腹腔鏡を使用した胃の手術(区分番号「K647-2」、「K649-2」、「K654-3」、「K655-2」、「K655-5」、「K656-2」、「K657-2」、「K662-2」、「K666-2」、「K667-2」又は「K667-3」)が1年間に合わせて20例以上実施されていること。

(3) 外科又は消化器外科について5年以上の経験を有し、当該手術に習熟した医師の指導の下に、当該手術を術者として10例以上実施した経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること。

(4) 当該手術を担当する診療科において、常勤の医師が2名以上配置されていること。

(5) 常勤の麻酔科標榜医が配置されていること。

(6) 高血圧症、脂質異常症又は糖尿病に関する診療について合わせて5年以上の経験を有する常勤の医師1名が配置されていること。

(7) 常勤の管理栄養士が配置されていること。

(8) 緊急手術体制が整備されていること。

(9) 前年度の実績等を地方厚生局長等に届け出ていること。

(10) 当該保険医療機関において当該手術を実施した患者に対するフォローアップ(年に1回、体重、生活習慣病の重症度等を把握することをいう。)を行っており、フォローアップの内容が一元的に記録されていること。なお、術後5年目の捕捉率が7割5分以上であることが望ましい。

2 届出に関する事項

(1) 腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)に係る届出は、別添2の様式52及び様式65の6を用いること。

(2) 当該治療に従事する医師の氏名、勤務の態様(常勤・非常勤、専従・非専従、専任・非専任の別)及び勤務時間を、別添2の様式4を用いて提出すること。



 
詳しくはメールや電話でのお問い合わせも大丈夫です。


 


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